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2020.07.25 Sat エロゲーレビュー:Pieces 揺り籠のカナリア

これは結愛のための物語。

以下、元作品の「Pieces 渡り鳥のソムニウム」をソムニウム、当作品をカナリアと称す。

0 公式等
公式
https://whirlpool.co.jp/canary/

ソムニウムの記事
http://escaper0702.blog.2nt.com/blog-entry-139.html

1 キャラ
プレイ順は結愛→omnium→ありす→深織→貴美香→紬
omniumは結愛直後に解禁されるのでプレイはできるが、最後に持っていった方がいいのは言うまでもない…。
結愛→omniumを最後にもってきて、あとは任意順番がベスト。

(1)君原結愛
Piecesという作品群におけるヒロイン(この辺の深堀は後述)。CV:夏和小
シナリオが一番多いというのもあるが、カナリアで魅力が増したと思う。
燕への想いは随一。

(2)小鳥遊紬
幼馴染を取り戻したヒロイン。CV:鈴谷まや
omuniumで幼馴染という立ち位置に戻ったというわけのわからんポジションの幼馴染。

結愛以外のヒロインと比較し、重めのシナリオと立ち位置をソムニウムで担当したので
カナリアの個人√もちょっと重め。そのせいか、脳死でイチャラブって感じでもない。
個人的にはソムニウムの時の方がかわいかった。ある意味ではシナリオの被害者。

(3)藍野深織
おっぱい先輩。CV:そよかぜみらい
以下3人は個人シナリオがそこまで重くなく、多少の伏線回収という感じのシナリオのため、ある程度脳みそ空っぽでも問題なくプレイ可能。

(4)美城ありす
後輩。CV:鹿野まなか
評価自体はソムニウムと変わらずといったところ。

(5)伊集院貴美香
チョロイン。CV:水野七海
さすがサブヒロインだ展開が早いぜ。とはいえ「なぜ天使を自称するか」など伏線は一応回収される。
エロシーン2枠なのに1枠コスプレエッチが放り込まれるあたり、この作品のコスプレエッチの執念が感じられる。

2 システム
ソムニウム準拠。

3 音楽・演出
特筆点はなし。

4 シナリオ
なかなか整理が難しいが、ソムニウムと合わせながら解釈違いを修正しつつ、Piecesという作品群として述べようと思う。

(1)この作品は"ファンディスク"なのか
まずここを語ろうと思う。
個人的には、ファンディスクと言い切れない、と思う。

結愛以外についてはファンディスクといっても差し支えないと思う。
イチャラブを補完、サブヒロインの攻略という構成なので。

結愛についてはかなり毛色が違う。
個人√でソムニウムのTrueから続く物語であることが冒頭で示され、omniumと一連で結愛√を構成する。

今にして思うと、ソムニウムのTrueは所謂一般的なTrue√ではなく、単に世界の「真実(その場合だとtruthの方が近いが)」というだけの意味でしかなかったと思う。

かなり突っ込んだ言い方をすると、この作品で攻略が可能になったのは貴美香だけではなく、
結愛が攻略可能になったのだと思っている。

カナリアはファンディスクではなく、分割作品としてPiecesという作品群を構成する1つ、というのが個人的な解釈である。

(2)個別√:紬
ソムニウムでの燕が雷の怪我から退院したあとの流れ。

かなり重要なのが結愛のことで、ソムニウムをプレイしただけだと結愛は目覚めた解釈になるが(実際、紬もそう解釈している)、
実際はまだこの世界で寝続けていることである。つまり「天使」を結愛が引き継いでいる。

√を通した流れは結愛のことであり、全体的に重い。
そもそも紬のシナリオ自体ソムニウムから重いのに、カナリアで紬のやりたかったこと(結愛を現実世界で目覚めさせる)が実はできていません、けど幸せになってくださいっていうのはシナリオとして釈然としないものはある。

ほか、紬の「2回目」の意味が語られる。
初代「天使」として全能者であった時の「人形」から天使の役割を引き継ぎ、目覚めた後一度汽車で現実世界に帰っていることが明確に語られる。全能者であった時代の「人形」のことも覚えており、燕に対し「2回目」という言葉を使用している。

(3)個別√:深織
全体的にはイチャイチャで終わり。世界の維持は結愛が行っている(家でずっと寝ている)。これはソムニウムからの引継ぎ。
特段語ることはない。

(4)個別√:ありす
基本的はイチャイチャで終わるが、伏線の回収として「渡り鳥のソムニウム」がある。
ソムニウムTrueでありすと晃司が出した曲であり、この曲の製作がありす√で回収される。

この√では結愛が起きており、シナリオでも登場する。
つまり誰かが別に世界の維持をやっているのだが、恐らくは獏付きの深織が天使代行を続けているのであろう。

(5)個別√:貴美香
新規√であるが、貴美香が「夢を覚えている」体質であること、「天使」からの接触があったため、自ら天使を名乗っていることが明かされる。
貴美香が夢を覚えているのがポイントで、貴美香に接触した「天使」は紬でも深織でも結愛でもないと考えられる。
(仮にこの3名の誰かが接触者ならば、貴美香は覚えているはずなので、何かリアクションがあると考えられる)

この√も結愛がおきているため、世界維持の状況は変わっていない。つまり獏付きの深織が行っているものと思われる。

(6)「omnium」の意味
グーグルで調べた限り、「寄せ集め」という意味がしっくりくる。
世界を寄せ集め、結愛が構成した「揺り籠」である。

(7)結愛√
この√のみすべてが特殊である。世界はカステラが夢見ており、結愛とノアで作成した模造品の世界である。

ソムニウムのTrueの意味、「お母さん」が世界をもう1つ再構成し、燕の受け皿を作成し、燕の願い通り、皆がミッテベルでのことを忘れた世界を生成した、ということが語られる(作中ではB世界として呼称される)。
B世界は「結愛、紬、ありす、深織と出会い、みんなと出会って幸せにしてる」という描写があり、これはソムニウムのTrueのことであると解釈する。

ポイントとしてはこの時点で世界は分岐したこと(つまりソムニウムのTrueはそれ自体で一つの結論として独立している)となり、
カナリアでの一連のシナリオではA世界(単に燕のことをみんな忘れて終わり)の結愛が揺り籠を形成することで始まることが明らかになる。
そしてB世界はソムニウムエンディング前に「派生した」世界であり、今回カナリアで描かれる世界はA世界(本筋の世界)であると考えられる。

結愛本人がからっぽのまま世界に投げ出されたと語っていること、結愛のポジションを代替した燕に対して、紬が説教している内容がそのままA世界での結愛の置かれた状況を示している。

シナリオの細かい点は本編に譲るが、紆余曲折ありA世界でも燕は結愛のポジションで受け皿を得て、結愛は独自に戻ることで
結愛と燕(と紬)がミッテベルでの記憶を持った状態で現実世界に戻る、完全なHappy Endが描かれることになる。

また、B世界では失われた紬の「燕の幼馴染」というポジションが、結愛と立ち位置を交代したことにより、現実世界でも復活している(ここで結愛と紬の関係が、従姉妹で幼馴染ということが明かされる)。

(8)ノア
omniumで突然出てくるが、声自体はソムニウムでも出てきている。傍観者であり「お母さん」ではない天使。
「かつてのお兄ちゃんや『あの方』の答えにボクは納得しない」の一言は、プレイヤーの発言を代弁していると解釈。
(実際、思い返すと不可解な願いでもある)

(9)この作品におけるHappy Endとは?
最後に、ソムニウムの感想記事で挙げた2つの命題について、再度述べようと思う。

結愛以外のヒロイン陣については、結局ミッテベルの話である。
結局解釈の問題であるが、ミッテベルでのHappy Endは果たしてそれでいいのか、というところもある。

この作品自体は結愛を一本完全に幹に置いたグランド√スタイルで、結愛とそれ以外のヒロインは平等ではない。
それはシナリオの形式的な話のみならず、中身にも及ぶ。
現実世界での話まで含めた解決を図っているのは、ソムニウムTrueとカナリアomniumのみで、それ以外は「一夜の夢」でしかないのだ。(ソムニウム感想では紬もHappy Endの解釈余地について述べたが、それはカナリアで否定された)

燕視点で見れば、各ヒロインの√もHappy Endなのかもしれない。恐らくあの世界で歳を取り、看取り看取られはするのである。

その後はどうか?
燕は世界から消え、ヒロインは一夜の夢として現実に戻るのではないか(ミッテベルでの死は世界から弾き出されるだけなので)。
先述した通り、それは単なる解釈問題でしかないのかもしれないが、燕がありす、深織、紬、貴美香と恋愛関係になる「現実」が恐らく発生しない以上、Happy Endと言いにくいのではないか、というのが個人的な想いである。

(10)この作品はHappy Endなのか。
カナリアでようやく「Piecesという作品群は最終的にHappy Endを扱った」と述べることができる。

ソムニウムTrue(B世界)に関して、前の感想記事の引用になるが、

"燕がヒロイン4人を最終的に見つけたか、結愛と恋仲に戻ったかの描写は明確にはない。
最後のシーンで各ヒロインに「またね」と言われたこと、最後の結愛の描写からも、
恐らくはみんなまた会えたこと、結愛と恋仲に戻ったのだと思う"

という解釈は、一応正解であったことが、ノアから語られる。

そして今回カナリアomniumで、A世界での解決も図られたことで、「結愛が目覚め」「現実での燕の受け皿がある」という条件に加え、「ミッテベルでの互いの想い」を残したという完全な条件で、エンディングを迎えることになったのである。

B世界のエンディングは3つ目の条件が満たされないことが、Happy Endとして扱うことに解釈の余地が発生していたと思っている。

(11)その他雑記
このゲームをプレイして、ふとゼルダの伝説夢を見る島を思い出した。
別のゲームのネタバレをしてもあれなのだが、不思議と類似点が多い。

5 エロシーン
枠は貴美香以外が4で、貴美香は2。
作中で夢の中でのエッチが描かれており、紬の授乳手コキやありすの悪魔えっちあたりは夢での話となっている。
総じてコスプレが多いのが特徴で、先述した通り、2枠しかない貴美香ですら天使コスのエッチがある。

6 総合評価
ソムニウムでもシナリオとしての完成度は高かったが、そこにHappy Endの解釈を、
元の世界観を損ねることなく投入した意欲作である、という感想。

一方でファンディスクと呼ぶのはちょっと違うような気がするのも先述のとおり。
Piecesという作品は、この揺り籠のカナリアまで含めないと完成しないと思っている。

前作は世界観、つまり世界の描写と崩壊のカタルシスを、
今作では結愛を中心に、Happy Endのシナリオを描いているため、そもそもシナリオの着眼点が違うとも考えられる。

個人的に評価はかなり高めです。


いじょ

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