2ntブログ

逃亡者日記R

Home > エロゲ雑記 > エロゲーレビュー:9-nine-(考察side)

2020.05.07 Thu エロゲーレビュー:9-nine-(考察side)

GWも今日で最後。
この作品に4日近くかぶりつきだったので、思ったより反動があってか、次のゲームにほとんど手がつかずという状況。
自分なりの締めとして、作品形態へのリスペクトも兼ねて、サノバ以来、久々に考察で1記事作ろうと思います。

【0 このblogの記事】
Ep1
http://escaper0702.blog.2nt.com/blog-entry-129.html
Ep2
http://escaper0702.blog.2nt.com/blog-entry-134.html
Ep3
http://escaper0702.blog.2nt.com/blog-entry-135.html
Ep4
http://escaper0702.blog.2nt.com/blog-entry-137.html

【1 最後の観測】
このゲームは「最悪の結末へ分岐しうる枝が、残ってしまっている」→「最高の結末を、掴むために」という形で、都の後ろ姿でゲームが終了する。この最後の観測とは、なんであろうか。

(1)前提条件
このシーンのソフィーティアの話
「天、春風の枝では枝の剪定が終わった」とある。
「しかし一つだけ、翔に影響を受けた人間の行動によって分岐してしまった枝がある」と言及される。
そして最後の都の立ち絵から、都の枝に絡むことは疑いはない。

(3)仮定1:都BAD
夜の神社に都1人で行く√は都が石にされる都BADの枝しかないため、このシーンではないかという仮定は浮かぶ。
しかし、「オーバーロードは望まぬ運命を否定し、なかったことにできる」「翔を導くことで、運命を固定化」とあるので、
そもそもこの枝自体がオーバーロードによって否定されているはず、と考えられる。
よってこの枝の観測をしているわけではない。

(4)仮定2:都END
となるとこの√の観測を最後はすることになる(消去法として、これしか残らないのもある)。

ポイントとなるのは「翔に影響を受けた人間の行動によって分岐してしまった枝」というソフィーティアの言葉。
この分岐については、翔が作った枝ではないということになる。

Trueエンド時点で、都ENDに乗せられる情報は、下記
(ア)都がすべての枝の都の記憶を所持している(∵Trueでの記憶のインストール)
(イ)イーリスは存在しない(∵9の未来接続がこの枝にも及んでいるため)

となると、「翔に影響を受けた人間」は都で、「最悪の結末」はこの場合、イーリスが存在しない以上、次点で来るのは都の死と考えられる。そこから考えると、都の性格上、想定される行動としては「与一を止める」ということになる。
(ただし、この仮定は「翔に影響を受けた」が微妙に引っかかることになる。影響を与えたのは厳密に言うとナインなので)

与一の都END時点での状況は「蓮夜を失っている」のみなので、魔眼、幻体、ワープ、槍飛ばしあたりは使用可能。
場合によっては、蓮夜の空間切断を使用可能である可能性もある。都√の与一自身は特段のロスをあまりしていない上、都が正義感で突っ走る可能性が高い以上、このルートが最悪の結末へ分岐しうる枝となる。

以上より、この枝の観測を最後にしたものだと考えられる。

ちなみに、Trueでの戦闘は希亜の枝ベースで行われているため、希亜以外の枝の与一はイーリス絡みの情報は行っていないと仮定して他の√に本当に脅威がないかを考えると、
(ア)春風√は与一自身も活動ができない
(イ)天√は与一自身は十分に動ける と考えられる。
都√は与一が翔たちの動きを認識してるか不明だが、天√では与一が明確に翔の動きを認識している。
この√も危険な可能性はあるが、それは天が自分からちょっかいをかけないから分岐しない、ということになるのであろうか。

【2 これはHappy Endなのか?】
(1)前提として:残る枝の考察
まず都、天、春風についてはそれぞれのBADを除いたENDが残ると考えられる。
幻体の操作という観点もあるが、作品の性質上、それぞれのヒロインと恋仲になった枝の否定はありえないだろう。

希亜についてはTrueが朝フェラの後に枝分かれしているため、Trueに行かない枝自体は剪定してしまって構わない。
イーリスのオーバーロードによる敗北の枝もあるため、Trueに行かない枝は落としている可能性が高い。
(ほかのヒロインのBADと同じ扱い)

加えて明確に残すと言及されている「イーリスを倒す枝」(∵「最良とはいえないけれど、剪定はできない」「命と引き換えにすることでしかイーリスは倒せなかった」)
この5つが最終的に未来へ続く枝であると考えられる。

(2)春風
わかりやすいところから。
最終END時点で乗る情報が「イーリスの死亡」で、この枝の懸念点はイーリスそのものであるため、これはHappy Endとなる。

(3)都
1で考察した「最後の観測」にもよるが、当然にうまくいったとするならば懸念点は払拭されていることだろう。

(4)天
ちょっと難しい。
最終END時点で乗る情報「イーリスの死亡」については、与一が接触しなくなる効果があるものの、与一自身の戦闘力は維持されている。
ゴーストとの戦闘の時点で翔の情報は与一に伝わっているため、与一と明確に敵対する余地が残る枝である。
「イーリスの死亡」が懸念点の払拭に直接つながっていないため、betterにはなるもののbestにはならない枝である。

(5)希亜
枝自体はごちゃついているが、この枝も完全にイーリスが懸念点なので、イーリスが死んでいれば問題ない。

(6)イーリスを倒す枝
大問題の枝。
イーリス自体は死んでいるが、メインヒロイン全員が死亡している√なのでBADもBAD。
しかし枝の剪定はできないため、この枝は未来へと進む。
この枝の翔の精神が持つとはとても思えない。

(7)Happy Endとは
結局めでたしめでたしといえるのは春風と希亜の枝だけ。
都と天の枝は懸念点が残るし、イーリスを倒す枝は問題外。

しかし、主人公をナインとするならば、話は変わる。
結局イーリスは倒せたので、全体として見れば無事に魔王は倒せました、ということになる。
翔も大多数の枝では幸せになっているため、まあそういうことなんだろうと、「そう割り切るしかない」

結局ゲームプレイをする際に主観(翔)か客観(ナイン)かというスタンスでもHappy Endの定義は変わると思われる。
個人的には後味はビターなゲームだと考える。

【3 チェス盤の意味】
Ep4のパッケージにはチェス盤が描かれている。
これは特に根拠もない、雑駁な考察にはなるが、最終的にナインとイーリスで、それぞれの世界から翔と与一を使って戦いをするこのなるが、これがいわゆる盤外から駒を操るのに見立てられ、パッケージがチェス盤になったのではないかと推察する。

それぞれのプレイヤーの勝利条件も違い、イーリスは盤面の駒の破壊(翔の心を折る)することで操作可能な駒を盤面から除外することで勝利することを狙い、ナインはジ・オーダーによるプレイヤーへの直接攻撃により、対戦相手そのものの除外を狙う。

このゲームの世界観は、最終的にはゲームボードなのではないだろうか。

【4 ナインという舞台装置とその効果】
【2 これはHappy Endなのか?】の考察で「主観(翔)か客観(ナイン)か」という話に言及したが、このゲームはEp3までとEp4で大きく変わり、Ep4でプレイヤーは主人公との同一存在であるナインである、と明言される。オーバーロードの言及はEp3からで、この時点では翔のアーティファクトということになっていた。これにナインという存在を設定し、オーバーロードは神の視点(客観視)たるナインが所持していることになった。このことについて、考察を加えたい。

この舞台装置のメリットとして、複数ヒロインを攻略する(しかも、作品としてもロープライス作品で独立させている)ことについて、神の視点を導入したことにより、意味合いを持たせたことに成功している点が挙げられる。
つまるところ、それぞれを完全な独立している話としているのではなく、横串を通す存在を導入することで、「独立」しつつも「グランドエンディングにおいて話を結合させる」ことに成功していると考えられる。

逆にデメリットとして、作品を読み進めるうえで、客観視を強制されることである。
エロゲに限らず、創作物のプレイスタイルというのは各々あると思うが、よく聞くものの一つに「主人公視点」か「俯瞰視点」か、言い換えると「主人公になったつもりで作品に没入するか」か「あくまで作品として読むもの」かという違いは挙げられる。
エロゲは音、画像、動画もあり、テキストを自身で読み進める(オートモードもあるが)という点で、アニメ等に比べ能動的に動くこともあり、比較的没入感は高い媒体である。
そのエロゲというメディアにおいて、客観視を強制するのは、必ずしもプラスには働かないものと考える。
ナインという視点を導入したことで、実際の物語を歩む翔とはある意味では距離ができることになり、個人的にはちょっと違和感を覚えることはあった。

【5 9-nine-という作品について】
9-nine-という作品群は、あらためて説明するまでもないことだが、 ロープライスの作品4つとして出ている。
一方で、各作品の独立性は高くなく、フルパッケージの作品として出ていても、さして違和感はない。
最後に、9-nine-という作品がロープライスの作品群として出た意味について考える。

いい点としてはとして3点ほど考えられる。1点目は後発の作品を、ある程度は臨機応変に動かせることである。ライターさんのtwitterを見ると「反応を見てキャラの動かし方を変えられる」というつぶやきがあったが、まさにこれだろう。

2点目として、この手の作品(いわゆる大きなグランドエンディングがあり、各ヒロインの√はそこから枝また、分かれするような作品)の場合、往々にしてグランドエンディングの√で攻略されるようなセンターヒロインが、言い方が悪いが正史みたいな扱いをされる場合もある。しかし、9-nine-シリーズはパッケージも4つ出ているため、いわゆるセンターヒロインというものは存在しない。

もちろん最後はゆきいろで占めているので、希亜がそこに当たるという考え方もあるが、【2 これはHappy Endなのか?】で考察している通り、枝として最後に残ったのは、各ヒロインと結ばれる未来に、イーリスを倒す未来の5つである。いわゆるグランドエンディングは「イーリスを倒す未来」であり、各ヒロインと結ばれる枝については、ある意味では等価である。
そう考えると、いわゆるセンターヒロインを発生させないという意味で、ロープライスの作品群で出したのではないかと考えられる。

3点目は、現在のエロゲ環境の問題にもなるが、おそらくこのボリューム、この内容をフルプラの一本のゲームとして出した場合は、プレイハードルとしてはかなり高いものになる。
今のエロゲユーザーは他にもアニメにソシャゲにVtuberなどなど、安価でむしろ時間を多く使うコンテンツを他に抱えている場合も多く、年齢層も上がっているため、1本のエロゲに対して消化する時間を多く充てられる人はそこまで多くないと思われる。
そういったユーザー層を相手にする場合、1つ1つを区切ることができるロープライスの作品群として出すことは、心理的ハードルを下げる効果があると考えられる。

逆に悪い点としては、単に話を忘れる、ということは挙げられる。
ケアの方法として、猫忍えくすはーとシリーズは一応「前回までのあらすじ」というものが設定されている(正直、前回のことをちゃんと覚えてなくても差支えがない作品群なので、私は読まなかったが)。一方でm9-nine-シリーズも、ゆきいろになるとオーバーロードで各枝の概略を確認できるが、それまでは特にreviewみたいなコマンドはない。
私の場合はそらいろから一気にやったのであまり問題はなかったが、それでもここのつの内容の細部は思い出せなかった。
時間経過のデメリットはあろうかと思う(ただし、それをケアするため、天と春風はそれぞれ前の枝から分岐するようになっているため、多少はシナリオ上おさらいしてくれる)

【6 最後に】
考察としては以上。
あとは最後に雑感など。

作品としての評価は、個人的は非常に評価が高い。
それは心を揺さぶった、という点に尽きる。
つばす先生の絵を用い、強力な声優をそろえ、単なる萌えゲーとして作っても問題なさそうなヒロイン陣に、あえてかなり賛否が出そうなシナリオを乗せたことは冒険だと思うし、その結果生まれた決してHappyとは言えない読後感は、最近そういった作品に手も付けていなかったこともあり、非常に印象深かった。

この考察で自分として一番言いたかったのは【2 これはHappy Endなのか?】で、個人的にこの作品はHappyEndではないんだと思っている。でもそれは翔に主観を置いているからで、読み方としては【4 ナインという舞台装置とその効果】で述べた通り、客観視というものが示されている以上は、翔に主観を置いた読み方は間違っているのかなとも思う。

新型コロナウイルスによる緊急事態宣言という状況下ではあるので、こんなことを言うのも若干憚れるが、この作品に対してじっくりと向き合える時間があったことは、プレイするタイミングとしては最良だったのかなとも考えている。

以上。

Comments

name
comment
comment form
(編集・削除用) :
管理者にだけ表示を許可